シェーダークラス、ミックスイン、継承
Stride シェーディング言語(SDSL)は、HLSL を拡張し、より C# の構文や概念に近いものになっています。この言語はオブジェクト指向です。
- シェーダークラスはコードの基礎となるものです。
- シェーダークラスにはメソッドとメンバーが含まれます。
- シェーダークラスは継承可能で、メソッドはオーバーライド可能です。
- メンバーの型をシェーダークラスにすることができます。
SDSL では、独自の方法で多重継承を実現しています。継承はミックスインで行われるので、継承の順番が重要になります。
- 継承の順番によってメソッドの実際の実装を定義します(最後のオーバーライド)。
- ミックスインが継承の中で何度も現れた場合は、最初に現れたものだけを考慮します(メンバーやメソッドも考慮します)。
- メソッドの直前の実装を呼び出すには、
base.<メソッド名>(<引数>)
を使います。
キーワード
SDSL では、HLSL のキーワードに新たなキーワードを追加しています。
stage
: メソッドとメンバーのキーワードです。このキーワードは、メソッドやメンバが一度だけ定義され、コンポジション内で同一であることを確認します。stream
: メンバーのキーワードです。このメンバーは、シェーダーのすべてのステージでアクセス可能になります。詳細については、シェーダーステージ入出力の自動管理を参照してください。streams
: シェーダーのいくつかのステージにまたがって必要とされる変数を格納するグローバル構造体のようなものです。詳細については、シェーダーステージ入出力の自動管理を参照してください。override
: メソッドのキーワードです。このキーワードがない場合、コンパイラはエラーを返します。abstract
: メソッド宣言の前で使用されます(メソッドの本体はありません)。clone
: メソッドのキーワードです。シェーダークラスの継承ツリーにこのキーワードを持つメソッドが複数回現れている場合、継承の各レベルでメソッドのインスタンスを、1つではなく複数作成することを強制します。詳細については、コンポジションを参照してください。Input
: ジオメトリシェーダーとテッセレーションシェーダーのためのキーワードです。詳細については、シェーダー ステージを参照してください。Output
: ジオメトリシェーダーとテッセレーションシェーダーのためのキーワードです。詳細については、シェーダー ステージを参照してください。Input2
: テッセレーションシェーダーのためのキーワードです。詳細については、シェーダー ステージ.Constants
: テッセレーションシェーダーのためのキーワードです。詳細については、シェーダー ステージ.
抽象メソッド(abstract)
SDSL では、抽象メソッドが利用できます。抽象メソッドには abstract
キーワードを付ける必要があります。抽象メソッドは、実装しなくても、シェーダークラスから継承することができます。この場合、コンパイラはシンプルで無害な警告を出すことでしょう。ただし、コンパイルエラーを防ぐためには、最終的なシェーダーでそれを実装しなければなりません。
アノテーション
HLSL と同様に、SDSL でもアノテーションが利用できます。最も役立つものをいくつか挙げます。
[Color]
:float4 変数に付けます。このエフェクトパラメータのキーの型は、Vector4
ではなくColor4
になります。また、この変数を色として扱うよう Game Studio に指示することで、Game Studio 上で編集できるようになります。[Link(...)]
:値を設定するために使用するエフェクトパラメータのキーを指定します。ただし、独立したデフォルトのキーが作成されます。[Map(...)]
:値を設定するために使用するエフェクトパラメータのキーを指定します。新しいパラメーターキーは作成されません。[RenameLink]
:エフェクトパラメータのキーの作成を回避します。[Link()]
と一緒に使ってください。
サンプルコード:アノテーション
shader BaseShader
{
[Color] float4 myColor;
[Link("ProjectKeys.MyTextureKey")]
[RenameLink]
Texture2D texture;
[Map("Texturing.Texture0")] Texture2D defaultTexture;
};
サンプルコード:継承
shader BaseInterface
{
abstract float Compute();
};
shader BaseShader : BaseInterface
{
float Compute()
{
return 1.0f;
}
};
shader ShaderA : BaseShader
{
override void Compute()
{
return 2.0f;
}
};
shader ShaderB : BaseShader
{
override void Compute()
{
float prevValue = base.Compute();
return (5.0f + prevValue);
}
};
サンプルコード: 継承順序の重要性
ShaderA
と ShaderB
の継承順序を変えるとどうなるかに注目してください。
shader MixAB : ShaderA, ShaderB
{
};
shader MixBA : ShaderB, ShaderA
{
};
// 結果コード(イメージ表現)
// Resulting code (representation)
shader MixAB : BaseInterface, BaseShader, ShaderA, ShaderB
{
float Compute()
{
// BaseShader から取得
// code from BaseShader
float v0 = 1.0f;
// ShaderA から取得
// code from ShaderA
float v1 = 2.0f;
// ShaderB から取得
// code from ShaderB
float prevValue = v1;
float v2 = 5.0f + prevValue;
return v2; // = 7.0f
}
};
shader MixBA : BaseInterface, BaseShader, ShaderA, ShaderB
{
float Compute()
{
// BaseShader から取得
// code from BaseShader
float v0 = 1.0f;
// ShaderB から取得
// code from ShaderB
float prevValue = v0;
float v1 = 5.0f + prevValue;
// ShaderA から取得
// code from ShaderA
float v2 = 2.0f;
return v2; // = 2.0f
}
};
静的呼び出し
シェーダーを継承せずに、そのシェーダーの変数を使ったり、メソッドを呼び出したりすることもできます。これを行うには、<shader_name>.<変数またはメソッド名>
を使用します。これは静的呼び出しと同じように動作します。
シェーダークラスの変数を使うメソッドを静的に呼び出すと、シェーダーはコンパイルされないということに注意してください。これはシェーダーの一部だけを使用するのに便利な方法ですが、最適化ではありません。シェーダーコンパイラは、すでに不要な変数を自動的に削除しています。
サンプルコード:静的呼び出し
shader StaticClass
{
float StaticValue;
float StaticMethod(float a)
{
return 2.0f * a;
}
// このメソッドは a を使う
// this method uses a
float NonStaticMethod()
{
return 2.0f * StaticValue;
}
};
// このシェーダークラスは問題ありません。
// this shader class is fine
shader CorrectStaticCallClass
{
float Compute()
{
return StaticClass.StaticValue * StaticMethod(5.0f);
}
};
// 呼び出しが静的でないため、このシェーダークラスはコンパイルされません。
// this shader class won't compile since the call is not static
shader IncorrectStaticCallClass
{
float Compute()
{
return StaticClass.NonStaticMethod();
}
};
// 修正方法のひとつ
// one way to fix this
shader IncorrectStaticCallClassFixed : StaticClass
{
float Compute()
{
return NonStaticMethod();
}
};